伊邪那岐
国生みの神

伊邪那美とともに日本の国土を生み出した男神。最古の夫婦神のひとつで、多くの神々を生み出したことから夫婦和合、縁結びの神様としても知られている。また、国土から自然といった世界を創り出していったことから殖産振興の神様として知られ、更には、歴史上はじめての禊をされたことから、厄除の神様としても知られている。
祀られている神社
- 神魂(かもす)神社
島根県にあり、日本に現存する最古の大社造の建物だ。イザナギとイザナミを祀っている。家族の安全、子孫繁栄、厄除け、そして受験合格などの面でご利益があるとされている。

- 眞名井(まない)神社
京都にあり、磐座西座では天照大神、イザナギ、イザナミを祀っている。主に縁結び、夫婦和合、家内安全、延命長寿などの面でご利益があるとされている。

誕生
古事記の記録によると、天地が開き、この世界が作られたとき、5人の神様も一緒に生まれた。その神様たちは、天之御中主神(あまのみなかぬしのみこと)、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、神産巣日神(かみむすひのかみ)、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかひひこぢのかみ)、天之常立神(あまのとこたちのかみ)という。
日本で最初に生まれた5人の神様として、彼らには男女の性別がなく、世の中のことも管理しなかった。生まれた後はすぐに隠れ住んでしまった。そういう特別な立場にあったため、この5人は「別天津神(ことあまつかみ)」という名前でまとめて呼ばれている。
別天津神の後、「国之常立神(くにのとこたちのみこと)」を始めとする12人の神様が次々と生まれた。生まれた順番に従って、彼らは7つの世代に分けられ、「神世七代(かみよななよ)」と呼ばれている。「イザナギ」とその妹「イザナミ」は、この7世代の中で最後に生まれた神様だ。
イザナギとイザナミが日本神話で重要な位置を占めているのは、2人が結婚して日本の国土や、神世七代の後に続く多くの神様を生み出したからだ。
イザナミが火の神を産んで亡くなった後、イザナミは死者の国へ行き、イザナギは人間の世界に残った。そこから2人は別々の道を歩むことになった。
黃泉比良坂の帰還
イザナミの死に深く悲しんだイザナギは、イザナミへの思いを抑えきれず、黄泉の国まで追いかけて行った。黄泉の宮殿の外に着くと、イザナミに豊葦原中国(とよあしはらのなかつくに)に戻ってくるよう頼んだ。イザナミもそうしたいと答えたが、まず黄泉の神々の許可が必要だと言い、イザナギに宮殿の外で待つよう、そして中を絶対に覗かないよう告げた。
長い間待っていたイザナギは、好奇心と焦りを抑えきれず、宮殿の中に入ってしまった。そこでイザナミの恐ろしい姿を目にし、驚いて逃げ出した。
自分の醜い姿を見られたイザナミは怒り、ヤクサイカヅチノカミ(雷神)と豫母都志許賣(よもつしこめ)黄泉の醜女(ここめ)たちに追いかけるよう命じた。イザナギは必死に逃げ、やっと黄泉の国から脱出した。そして黄泉比良坂(黄泉の国と人間世界の境界)の下り坂で巨石を置いて、黄泉と人間の世界の通路を塞いだ。
豊葦原中国に戻ったイザナギは、体についた黄泉の穢れを清めるため、日向国(ひゅうがのくに)の海辺(今の宮崎県の江田神社あたり)で禊(みそ)ぎの儀式を行うことにした。儀式の最後に、左目を洗うと日の神「天照大御神」が、右目を洗うと月の神「月読」が、鼻を洗うと海の神「須佐之男」が生まれた。イザナギはこの三柱の神を「三貴子(みはしらのうずのみこ)」と呼んだ。
怒れる斬撃
しかし、火の神(火之迦具土神)を産んだ時、イザナミは陰部を焼かれてしまい、そのまま病に伏せってしまった。そして間もなく、この世を去ってしまった。深く悲しんだイザナギは、イザナミを出雲国(いずものくに)と伯耆国(ほうきのくに)の境にある比婆山(ひばやま)の下に葬った。
その後、怒ったイザナギは十束剣(とつかのつるぎ)を抜き、妻を殺した張本人である火の神の首を切り落とした。
関連する神様

伊邪那美
伊邪那岐の妻で、多くの神々を生み落としたことから、子宝や安産祈願の神として信仰されている。伊邪那美が祀られている神社では、ご祭神として伊邪那岐も一緒に祀られることも多い。また、伊邪那美は、黄泉津大神(よもつおおかみ)の別名を持ち、黄泉国、すなわち冥界の女王という側面も持ち合わせている。